FAQ

 

 

Q: nanoESI-MS/MSとLC-nanoESI-MS/MSは何が違うのでしょうか?

A1: サンプルが1種類の蛋白質単体、または2~3個程度の蛋白質の混合物であれば、Standardコース(nanoESI-MS/MS)で測定を行います。
2~3個程度の蛋白質の混合物であっても目的成分の方が極端に少ない場合などは、量の多い蛋白質由来のペプチドピークしかMSで検出できないので、目的蛋白質由来のペプチドピークを検出するためにはLCコースで分離しながらの測定が必要です。通常は、分離能力の高い2DEのゲルスポットであれば標準コース、免疫沈降後にSDS-Pageで分離精製したゲルバンドであれば、たいていが混合物である可能性が高いのでLCコースでの分析を推奨致します(分析例:LCコース vs. 標準コース)。

A2: LCコースの方が数倍高感度分析となります(bsaで10fmolが分析可能)。
微量サンプルの場合(銀染色、推定100fmol以下のサンプルなど)は、LCコースをご推奨致します。

Q: ゲル内消化はどのような方法で行っていますか?

A: In-gel digestionの手順は下記の文献や、その他公開されている手順を参考にして、それを改良した方法で行っています。
Shevchenko, A., Wilm, M., Vorm, O. and Mann, M. (1996) Anal. Chem. 68: 850-858. 
Trypsin以外の酵素として、Lysylendopeptidaseを使用することも可能です。ご注文時にご指定ください。料金は変わりません。

Q: データベース検索は生物種を指定できますか?

A: 必要であればもちろん可能ですが、検索は通常、全生物種で行い、普通は目的の生物種で同定蛋白質が得られます。目的の種に配列データが無い場合はヒットしないか、もしくは他の種でホモロジーとしてヒットすることになります。生物種を指定しないとそれらしい蛋白質がヒットしないということは、検索に用いるデータが不十分な場合に起こり、指定しないと得られないような同定結果は信憑性に欠けると言えます。従って、常に全生物種からの蛋白質同定を行うようにし、それが可能な十分なデータ取得を目指しています。

Q: どのようなサンプルを用意すればよいでしょうか?

A: 下記をご参考ください。

サンプルの状態 染色試薬 必要サンプル量 注意点 サンプル送付方法 その他
2次元電気泳動(2DE)のスポット CBB 100fmol以上   切り出したスポットをエッペンドルフチューブに入れ、冷蔵で送付。 スポット切り出しの際には、染色部分の周辺部をなるべく含まないようにしてください。ゲルが小さい方が、使用する酵素消化溶液量が少なくてすみ、酵素消化の効率が上がります。
SYPRO Ruby 50fmol以上
銀染色(グルタルアルデヒ ド不含) 100fmol以上
SDS-Pageのスポット(バンド) CBB 100fmol以上 展開前に1ステップの選別過程(免疫沈降、Affinity Chromatographyなど)が必要。基本的に複雑な混合物でないことが前提。
SYPRO Ruby 50fmol以上
銀染色(グルタルアルデヒ ド不含) 100fmol以上
溶液   1pmol以上 複雑な混合物でないのが前提。最終溶媒は、酵素消化の行程に影響しないものである必要があります。酵素消化には炭酸アンモニウム(50 ~100mM)やトリスバファー(~50mM)を使用します(pH=8 ~9)ので、最終溶液は水溶液か、上記のバファーが理想的 です。多少の尿素は大丈夫です。界面活性剤は酵素消化後の精製処理に影響しますので、できるだけ除去しておいてく ださい。 溶液をエッペンドルフチューブに入れ、冷凍で送付。  

Q: 実験環境、サンプル調整について気を付けなくてはならないことはありますか?

A: 電気泳動などを含む全ての段階で完全にKeratinを混入させない注意が必要です。Keratinは通常、人間の皮膚、すなわち手や頭皮などから混入します。過去の分析では、分析結果がKeratinのみしか得られないことはほとんど経験していませんが、目的蛋白質に混じってわずかながら検出されるケースはあります。ゲルの取り扱いの際にKeratinを混入させない配慮が必要だと思われます。